心臓病を知る

心臓病の主な疾患と治療

大血管疾患

大血管疾患とは、大きな血管に影響を与える疾患のことを指します。
代表的な大血管疾患には、動脈硬化症や動脈解離、大動脈炎などがあります。これらの疾患は、血管内の動脈壁に異常が生じ、血液の流れや栄養の供給に障害を起こすことで、心臓や臓器に悪影響を及ぼすことがあります。

末梢血管疾患

末梢血管疾患とは、末梢部にある血管に影響を与える疾患のことを指します。末梢血管は、手足や脚、腕などの周囲部位に存在しており、末梢血管疾患は主にこれらの部位に問題を引き起こします。末梢血管疾患の一例としては、動脈狭窄症や静脈瘤があります。これらの疾患は、血管の収縮や拡張、血液の循環の障害などが原因で発生し、手足の冷えや痛み、潰瘍などの症状を引き起こすことがあります。

大血管疾患や末梢血管疾患は、高血圧、高脂血症、喫煙、加齢、遺伝などの要因によってリスクが増大します。
予防や管理には、生活習慣の改善(適切な食事や運動)、禁煙、定期的な健康チェック、適切な治療などが重要です。
早期の発見や治療により、これらの疾患の進行を防いだり、合併症の予防や軽減が可能となります。

大血管疾患、末梢血管疾患の治療

大血管疾患および末梢血管疾患の治療方法は、病態の種類や進行状況によって異なります。

治療方法は個々の患者の状態に応じて決定されるため、正確な診断と医師の指示に従うことが重要です。
また、定期的なフォローアップや予防策の継続も疾患管理の一環として重要です。
一般的な治療の選択肢は以下の通りです。

生活習慣改善

食事の改善、適度な運動、禁煙など、健康な生活習慣を取り入れることが重要です。
これにより、血圧やコレステロールなどのリスク因子を管理し、疾患の進行を予防できます。

生活について、検査について、病院受診のサインなどを知りたい方

心臓病の情報がまとまった、心不全手帳をご覧ください。

禁煙、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理などが推奨されます。

食事

当院では心臓病患者さんの1日の食事において、食塩量は8.6g/日→5.3g/日に調整しています。
減塩食は1日の食塩摂取量を6g未満とするため、1食2g未満の食事としています。
当院の1日の食事における「通常食(1600kcal)」と「減塩食(1600kcal 塩分6g)」の違いはこのようになっています。

朝食

通常食
朝食通常食
献立名

・主食:食パン、ジャム
・主菜:エビ野菜ソテー
・副菜:ほうれん草サラダ
・牛乳

減塩食(食塩1日6g未満)
朝食減塩食(食塩1日6g未満)
献立名

・主食:ごはん、ゆずみそ
・主菜:エビ野菜ソテー
・副菜:ほうれん草サラダ
・牛乳

朝食の食塩制限食との違い

・パンには食塩が約1g程度含まれているため、主食を「パン(食パン)」→「ごはん」に変更して、食塩量を調整しています。

昼食

通常食
昼食通常食
献立名

・主食+汁物+主菜:鶏肉あんかけうどん
・副菜:里芋煮、竹輪とねぎのぬた

減塩食(食塩1日6g未満)
昼食減塩食(食塩1日6g未満)
献立名

・主食:ごはん
・主菜:鶏肉和風あん
・副菜:里芋煮、白菜の和え物

昼食の食塩制限食との違い

・麺料理には、麺や汁物に食塩が多く含まれているため、主食を「うどん(麺類)」→「ごはん」に変更して、食塩量を調整しています。

夕食

通常食
夕食通常食
献立名

・主食:ごはん
・汁物:中華スープ
・主菜:豆腐包み揚げ麻婆ソース
・副菜:春雨サラダ
・デザート:バナナ

減塩食(食塩1日6g未満)
夕食減塩食(食塩1日6g未満)
献立名

・主食:ごはん
・主菜:豚肉中華炒め
・副菜:春雨サラダ
・デザート:バナナ

夕食の食塩制限食との違い

・汁物は食塩を多く含むため、汁物を控えることで食塩量を調整しています。

補足:夕食の主菜が異なる理由について

1日のタンパク質量を考慮して、夕食の主菜内容が通常食と減塩食で異なっています。

薬物療法

高血圧や高コレステロールなどの病態に対して、適切な薬物療法を行います。
これにより、血管を拡張させたり、血栓を予防することができます。

血管手術

大血管疾患で重症化した場合や、末梢血管疾患で潰瘍や壊死が進行している場合に、血管手術が選択されることがあります。血管の修復またはバイパスなどの手術が行われます。

詳しく知りたい方

埼玉医科大学交際医療センター 心臓血管外科のホームページをご覧ください。

血栓除去治療

末梢血管疾患において、血栓が形成されている場合には、血栓除去治療が行われることがあります。
これにより、血管の流れを回復させることができます。

不整脈について

不整脈とは、心臓のリズムが正常でない状態のことを指します。
不整脈は軽度であれば問題ありませんが、重度の場合は心臓機能への影響や、命に関わる可能性もありますので、治療が必要です。

不整脈の治療

不整脈の治療方法は薬物療法の他に、主に以下の2つのアプローチがあります。

カテーテルアブレーション

この手法では、体内にカテーテルを挿入して不整脈を引き起こす異常な部分を特定し、焼灼(アブレーション)して除去することで治療します。

カテーテルアブレーション

デバイス植込み術

私たちの心臓は、電気信号によって動いています。
この電気信号が正しく送られることで、心臓は一定のリズムで収縮と拡張を繰り返し、血液を体中に送り出す役割を果たしています。年齢や心臓の問題によって、この電気信号がうまく働かなくなることがあり、場合によっては専用の機器を体内に植込む必要があります。これらの機器は、バッテリーで動いています。バッテリーは通常、5-10年間持続しますが、その後はバッテリーを交換する手術が必要です。

デバイスの種類

1 ペースメーカー
(PM:pacemaker)

ペースメーカーは、心臓のリズムをコントロールするための装置です。
心臓のリズムが遅い場合や不規則な場合に使われます。ペースメーカーは、小さな電気信号を送り、心臓が正しいリズムで収縮と拡張を行うように助けます。

2 植込み型除細動器
(ICD:Implantable Cardioverter Defibrillator)

ICDは、異常な高い心拍数や危険な不整脈(心臓のリズムが乱れること)を治療するための装置です。
ICDはペースメーカーのような機能に加えて、必要に応じて強力な電気ショックを与えて正常なリズムに戻すこともできます。これにより、心臓の異常な動きがコントロールされ、命を守る役割を果たします。

3 心再同期療法
(CRT:Cardiac Resynchronization Therapy)

CRTは、心臓の両側の心室が同時に収縮するように調整し、心臓の効率を改善するための治療法です。
これにより血液のポンプ効果が向上し、患者さんの症状や生活の質を改善する効果が期待できます。

遠隔モニタリング

ペースメーカー(PM:pacemaker)

遠隔モニタリングは、ペースメーカー、ICD、CRTを遠隔から監視する方法です。
患者さんの体内に植え込まれたデバイスは、定期的にデバイスや心臓の活動に関するデータを収集します。このデータは通信技術を使って専門の医療拠点に送信され、異常の早期発見が可能となります。
※緊急対応はできません。

不整脈の治療方法は個人の症状や状態に応じて異なる場合があるため、必ず医師の指示に従って治療を受けることが重要です。医師は詳しい検査結果や症状を元に、最適な治療方法を提案してくれます。

デバイス植込み術

難治性心不全について

重症心不全

動いた時の息苦しさや、だるさ、むくみなどが著明で、そのために何度も入退院を繰り返す状態や治療抵抗性の状態を言います。
このような患者さんは、予後が悪く、様々な治療手段を考慮することとなります。

詳しく知りたい方

下記ホームページよりご参照ください。